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 4.東京の温泉の成分と効能

東京の天然温泉は重曹泉になりやすい。

東京の天然温泉は、「海因性の黒湯」と「普通の地下水」の2つに分類できると前章で書きましたが、「火山性の温泉」とは違ってこの2つには大きな共通点があります。

東京の天然温泉は特別なことがない限りは「弱アルカリ性」です。これで、炭酸水素ナトリウム(=Na・炭酸水素塩 もしくは 重曹)が多いと「重曹泉」と呼ばれる温泉に区分されます。

この炭酸水素ナトリウムは、水に溶けると弱アルカリ性になる性質があります。さて、その炭酸水素ナトリウムを多く含んでいるのは、東京の地下に潜んでいる地層に秘密があります。

日本には多くの火山が存在して、度重なる噴火を繰り返してきました。すると、噴煙や溶岩と併せて火山灰が大量に吐き出されます。東京のある関東平野には、富士山、箱根山、浅間山、榛名山などの活火山が周囲にあり、東京の地面の下には火山灰や溶岩などの赤土層が積み重なっています。これを関東ローム層と言います。また、それだけでなく、かつて日本周辺で大きな噴火を起こした山・島などからも多くの火山灰が流れてきてテフラと呼ばれる広範囲な火山灰の堆積層(有名なものでは、鬼界-アカホヤテフラや姶良(=あいら)テフラ、阿蘇テフラ、洞爺テフラなど)を生成しました。

また、関東平野の河口部には利根川水系・荒川水系・多摩川水系などのたくさんの河口により巨大なデルタ地帯で形成されている、各水系の地下水脈がそこらじゅうに広がっています。なので比較的浅い場所(100〜300m)は淡水が常に注ぎ込まれています。その逆に最近増えている深深度(1000〜2500mあたり)では海水の影響を多くうけているために塩辛い温泉になりやすいのです。ちなみに、温泉銭湯は前者のほうがほとんどなので、塩辛い・・・ということはあまりありません。

さて、この淡水の地下水が浸透してくると、塩類(ミネラル)を多く含む関東ローム層などの火山灰質の層から、最初はカンタンに溶ける塩化ナトリウム(=食塩・中性)などがあっという間に流出してから(そのせいで海が塩辛いという説がある位ですから)、比較的溶出するのに時間がかかる炭酸水素ナトリウム(=重曹・アルカリ性)などが滲出してくる訳です。その他、マグネシウムやカルシウムなども同じような性質なので、結局は地下水が弱アルカリ性になる訳です。

さて、実は普通の地下水よりも黒湯のほうが特にアルカリ性になりやすいのですが、その黒い色になる為の成分が関与しているらしいのです。

前章で「黒湯は海草などの植生から生成した」と書きましたが、この海草が分解されて黒湯に至る時点で多くのアルカリ性の塩類ができあがるのです。海草が海底に堆積していくと、まずは菌類によって有機物より作られたヘドロが発生します。このヘドロが堆積が繰り返されて地面の奥深くに閉じこめられると、圧力や経年変化で有機酸とアルカリ塩に分解されてしまうのです。このうちの有機酸が、黒湯の黒い色の成分でフミン酸と呼ばれるものになります。そして、アルカリ塩のほうが炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウムになります。

実はこの変化は、日頃みなさんが使っている物体でかなりよく似た生成過程を行っているのです。それは、「石鹸」です。よく、アルカリ性のお湯で「美人の湯」などと呼ばれるのは、この石鹸の効果(余分な角質や皮脂を取り除く)を示しているのです。更に、この有機酸が粘土のようにコロイド状態になっている為に、肌に細かく密着して汚れをおとしたり、肌の表面に薄い膜を張るような効果をもたらします。

そのために、黒湯はエステにいくような効果をもち、保温・保湿に役立つので、皮膚疾患に効果があったり、保温効果が高く湯冷めしにくかったりするのです。

また、今まで上で書いてきたことのように、炭酸水素ナトリウムのようなアルカリ性の塩類が東京の温泉には多く含まれていて、重曹泉として認められやすいのです。

もちろん、温泉の医治効能は重曹泉としてのものを基本に持つことになります。但し、1リットルあたり1g以上の成分が含まれていないと療養泉として効能を書くことが出来ませんので、その内容を明示するために、温泉の成分分析表が浴場の見やすい場所に掲示してあるのです。

<Na-炭酸水素塩泉(重曹泉)のおもな浴用の適応症は?>

神経痛・筋肉痛・五十肩・運動麻痺・関節のこわばり・うちみ・くじき・慢性消化器病・痔疾・冷え性・病後回復期・疲労回復・健康増進・きりきず・やけど・慢性皮膚病・・・など

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